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IEA「世界エネルギー見通し2023」

 IEA(International Energy Agency:国際エネルギー機関)は、第1次石油危機後の1974年、当時のキッシンジャー米国務長官の提唱によって設立された、OECDの枠内における自律的な機関で、事務局はパリにあります。エネルギー問題に関しては、世界最高峰の機関です。メンバー資格は、OECD加盟国であって備蓄基準(前年の当該国の1日当たり石油純輸入量の90日分)を満たすこと、だそうです。
 活動目的に、エネルギー安全保障の確保(Energy Security)、経済成長(Economic Development)、環境保護(Environmental Awareness)、世界的なエンゲージメント(Engagement Worldwide)、の「4つのE」を掲げています。

 今年10月、IEAの主力報告書「世界エネルギー見通し2023」が公表されました。
World Energy Outlook 2023 – 分析 – IEA

 この報告書によれば、2030年までにエネルギーシステムに大きな変化がもたらされるそうです。
 IEA設立の契機となった第1次オイルショックから50年が経過し、世界のエネルギーシステムも大きく変化しましたが、さらなる変化が目の前で急速に展開しており、気候変動への取り組みやエネルギー安全保障の確保に重要な影響を及ぼしているそうです。

 オンラインでの要約とIEAニュースレターからの引用ですが、具体的な内容を見ていきましょう。

 現在、すでに世界の平均表面温度は産業革命以前の水準より約1.2℃上昇しています。
  (パリ協定の目標1.5℃まで0.3℃しかありません)。

 この報告書では、3つのシナリオについて分析しています。
①2050 年世界ネットゼロを達成するためのシナリオ(NZE: Zero Emissions by 2050 Scenario)
②有志国が宣言した野心を反映したシナリオ(APS: Announced Pledges Scenario)
③各国が表明済みの具体的政策を反映したシナリオ(STEPS: Stated Policies Scenario)

 ③のシナリオでも、2030年にはクリーンエネルギー技術が現在よりもはるかに大きな役割を果たすことが予想されています。
 例えば、道路を走る電気自動車の数が約10倍、世界の電力ミックスに占める再生可能エネルギーの割合は現在の約30%から約50%に増加、ヒートポンプやその他の電気暖房システムは世界的にガスボイラーを上回ります。
 そして、2030年までに、石油、ガス、石炭の需要はピークに達する、としています。
 ただ、クリーンエネルギーの目覚ましい成長にもかかわらず、シナリオ③(現在の政策設定)に基づくと、世界の平均気温の上昇を1.5℃に抑えるというパリ協定の目標の達成には至らないと見込まれ、今世紀中に世界の平均気温は約2.4℃上昇してしまいます。

 そこで、この報告書では、1.5℃目標を引き続き維持するための緊急の世界戦略として、以下を2030年までに行うことを世界に提案しています。
 ・世界の再生可能エネルギー容量を3倍に
 ・エネルギー効率の改善率を倍増(年率4%に)
 ・化石燃料事業からのメタン排出量を75%削減
 ・新興市場国・途上国におけるクリーンエネルギー投資を3倍に増やすための革新的で大規模な資金調達メカニズムを開発する。
 ・化石燃料の使用を秩序ある形で削減するための措置を追求する。

 
 高度経済成長期に育った私たちの世代は、電気を使うこと、に何か贅沢をするような背徳感がありますよね。
 原発事故を機に私がエネルギー問題の勉強を始めた頃でさえ、再エネ移行を実現するにはエネルギー消費量を半減させるくらいの省エネが不可欠、と言われていました。
 でも、今回この報告書を(オンライン要約だけですが)読んでみて、人類の明るい未来は「電化」に在って、主に太陽光発電と電気自動車、そしてヒートポンプ、風力発電、がそれを支える技術なんだと判りました。
 太陽光発電は、日本では、里山破壊メガソーラーで悪いイメージもできてしまいましたが、もっと都市部の至る所に設置されるべきなんでしょうね。

 グリーンでクリーンな豊富な電力は、決して贅沢でも不可能でもないってことなんですよね。
 現状でのネックは、人口増加が想定される新興国や途上国での移行の実現が遅れていること、と、実現するための資源や生産力が一部の国に偏っていること、だそうです。

 国連のグテーレス事務総長をして「地球沸騰化(global boiling)」と言わしめた今年の暑い夏を経験すると、もう無理かも、と弱気になってしまいますが、このレポートは、まだ1.5℃達成への扉は開かれているよ、と勇気づけてくれます。