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民法の親子法制が改正されました。

 民法の親子関係に関する部分の改正が、今月16日に閉会した臨時国会で成立しました。
 主な内容をご紹介しますね。

親権者の懲戒権規定を削除(今月16日からすでに施行)
 親権者はその子を「懲戒することができる。」と定めていた旧822条を削除し、代わりに、子の人格の尊重と体罰禁止を規定しました(821条)。
 悲惨な児童虐待が後を絶たず、「しつけ=懲戒権」がその正当理由とされがちだったためです。
 なお、児童福祉法と児童虐待の防止等に関する法律の該当関連部分も併せて改正されました。

嫡出推定の見直し(施行日未定(1年6か月以内))
 嫡出推定の制度は、父子関係の早期安定を目的としています。

○婚姻解消等の後300日以内に生まれた子
 現行では、前婚の夫の子と推定されます。
 改正法でも、再婚していなければ前夫の子と推定されますが、再婚していれば再婚した夫の子、再婚して離婚していれば(300日以内にバツ2以上)直近婚姻の夫の子、と推定されることになりました。
 改正の背景は、無戸籍問題です。母親が前夫の子となるのを恐れて出生届をしない例が多く、母親が再婚した場合には、その解消に繋がることが期待されます。

○婚姻成立後200日以内に生まれた子
 現行では、婚姻中に懐胎したことが推定されないため、嫡出推定もありませんでした。
 改正法では、婚姻成立後200日以内でも婚姻中の夫の子と推定されるようになりました。

再婚禁止期間の廃止(施行日未定(1年6か月以内))
 現行で女性にのみ課せられていた再婚禁止期間(100日、733条)は削除されます。

嫡出否認制度の見直し(施行日未定(1年6か月以内))
 嫡出推定は、生まれた子の父を早期に確定する制度なので、真実(生物学的父子関係)に反する場合もあり得ます。ただ、真実に反するという理由があれば誰でもいつでも父子関係を否定できるというのも困ります。そこで、嫡出推定に対する否認は「嫡出否認の訴え」という裁判により、原告になれる範囲や期間なども厳格に制限されています。

○否認権者の拡大
 現行では、嫡出推定を否認することができるのは、夫(父)に限られていました。
 改正法では、夫(父)に加え、子(親権者(母など)の代理行使)、母(子の親権者代理でなく母固有の権利)、前夫、にも認められることになりました。但し、母(固有)と前夫の否認権行使は「子の利益を害することが明らかなとき」は認められません。

○出訴期間の伸長
 否認権の行使は、裁判(嫡出否認の訴え)で行います。
 現行(夫(父))は、子の出生を知った時から1年です。
 改正法は、それぞれ次の時から3年にしました。父(夫)と前夫はそれぞれ子の出生を知った時、子と母(固有)は出生の時、からです。
 なお、被告は、子と母の訴えの場合は父(夫)、父(夫)の場合は子又は親権を行う母、前夫の場合は父(夫)及び子又は親権を行う母、となります。

○成長した子自身による否認権行使
 改正法で子自身の否認権行使も認められましたが、出訴期間が出生から3年に限定されることで、実際には子自身で意思決定できるわけではありません。そこで、21歳未満までは、父との継続同居期間3年未満であれば、子自身が嫡出否認の訴えを提起できることにしました。但し、父による養育状況に照らして父の利益を著しく害するときは認められず、また、生物学的親子関係がないことが前提です。

 なお、嫡出否認に関しては、生殖補助医療の提供等及びこれにより出生した子の親子関係に関する民法の特例に関する法律(2020年)の該当部分も併せて改正されました。

認知制度の見直し
 嫡出推定が無い場合、父子関係は父による「認知」で発生しますが、それが真実(生物学的父子関係)に反する場合もあり得ます。また、認知は基本的に父の一方的意思表示で為されるため、母の認識や子(未成年)の意思も反映されません。
 現行でも「認知に対する反対の事実の主張」が認められていますが、その権利者は「子その他の利害関係人」と広く曖昧な範囲で規定されています。
 改正法は「認知の無効の訴え」として、提訴権利者、提訴期間(7年以内)、を限定しました。
子又はその法定代理人は認知を知った時から、認知者自身は認知の時から、子の母(固有)は認知を知った時から、それぞれ7年以内です。子自身については、嫡出否認制度と同様の、21歳に達するまでの伸長も設けられました。
 なお、認知無効に関しては、国籍法の関連部分も併せて改正されました。

 嫡出否認と認知無効に関しては、人事訴訟法と家事事件手続法の関連部分も併せて改正されました。

 最近、民法の改正が相次いでいます。特に、親族・相続に関する部分の改正が多く、時代の流れと社会の変化を感じますね。それにしても、「嫡出」「非嫡出」という用語は、差別的イメージが付きまとうので好きになれないのですが、今回も審議会では複数回の見直し検討が議論されながら、結局、見送られたそうです。
 ただ、今回の改正を見て私の勝手な感想ですが、生物学的父子関係を推認する最重要ファクターが、「十月十日(とつきとうか)」から「DNA鑑定」へ科学的に進歩したなぁ、と思いました。
 他方で、生殖補助医療の加速的進歩には、法がまったく置いてけぼりになっている、ことも痛感しました。
 ずぅっと未来の社会では、「生物学的な親子関係」はどんな意味を持つようになるんでしょうか?
 興味もわきますね。