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金融商品取引法

 2006(平成18)年、証券取引法が改正されて「金融商品取引法」になりました。
金融・資本市場をとりまく環境の変化に対応し、利用者保護ルールの徹底と利用者利便の向上、貯蓄から投資に向けての市場機能の確保及び金融・資本市場の国際化への対応を図ることを目指して改正されました。
 これは、証券取引法の改正にとどまらず、投資サービス法制度整備として為されたもので、次の4つの柱がその具体的内容です。キイワードは、包括化・横断化、柔軟化(柔構造化)、公正化・透明化、及び厳正化、です。
  1)投資性の強い金融商品に対する横断的な投資者保護法制(いわゆる投資サービス法制)の構築
  2)開示制度の充実
  3)取引所の自主規制業務の適正な運営の確保
  4)不公正取引などへの厳正な対応
 このうち、2)以下は主に上場企業に関するものなので、以下では1)についてご紹介します。

1)投資性の強い金融商品に対する横断的な投資者保護法制(いわゆる投資サービス法制)の構築

①「証券取引法」から「金融商品取引法」へ
 縦割り業法を見直して金融先物取引法など4法律が廃止され、証券取引法改め「金融商品取引法」に統合されました。投資信託及び投資法人に関する法律はじめ89法律も改正され、その一部も同法に統合されました。
 証券会社や金融先物取引業者など規制対象業者の法律上の名称は「金融商品取引業者」となり、証券取引所や金融先物取引所の法律上の名称も「金融商品取引所」になりました。

②規制対象商品の拡大
 この頃、様々なデリバティブ取引など新しい金融商品が次々と出現し、利用者被害が問題になっていました。
 従前の証券取引法で規制対象としていた、国債、地方債、社債、株式、投資信託、に加え、証券取引法では有価証券に関するデリバティブ取引しか規制されていなかったところ、「有価証券」の範囲、と、「デリバティブ取引」の範囲を拡大して、新たな金融商品にも対応するようにしました。
 「有価証券」の範囲の拡大では、例えば、信託受益権の全般を有価証券とみなし、また、いわゆる集団投資スキーム(ファンド)の持分を包括的に有価証券と位置づけました。
 特に、集団投資スキーム持分の包括定義は、注意が必要です。
 金融庁の説明を次に引用しますね。
 集団投資スキームとは、民法上の組合契約、商法上の匿名組合契約、投資事業有限責任組合契約、有限責任事業組合契約その他いかなる形式によるかを問わず、❶他者から金銭などの出資・拠出を受け、➋その財産を用いて事業・投資を行い、➌当該事業・投資から生じる収益などを出資者に分配する仕組み(集団投資スキーム)に関する権利を、包括的に有価証券と位置付けています。(出資者の全員が事業に関与しているものなどは除かれます。)例えば、出資・拠出を受けた金銭などを用いて商品投資を行うもの(いわゆる商品ファンド)、不動産信託受益権などへの投資を行うもの(いわゆる不動産ファンド)及び各種の事業を行うもの(いわゆる事業型ファンド)などが、幅広く対象となります。

 「デリバティブ取引」の範囲の拡大では、有価証券関連に限らず、金融先物取引法が規制対象としていた外国為替証拠金取引はじめ、幅広い資産・指標に関する取引や様々な類型の取引が規制対象となりました。いわゆる通貨・金利スワップ取引や天候デリバティブ取引についても規制対象となりました。

③規制対象業務の横断化
 従前の縦割り業法を統合して幅広く定義された「金融商品取引業」は、登録制に統一されました。
 販売・勧誘、投資助言、投資運用、資産管理、において業務横断的に規制を受けます。

④業務内容に応じた参入規制の柔軟化
 金融商品取引業は、行おうとする業務内容の範囲(業務の種別)に応じて、次の4つの区分があります。
 第一種金融商品取引業は、流動性の高い有価証券の販売・勧誘、顧客資産の管理、などの業務。
 第二種金融商品取引業は、流動性の低い有価証券の販売・勧誘、などの業務。
 投資運用業は、投資運用に関する業務。
 投資助言・代理業は、投資助言に関する業務。

⑤業者が順守すべき行為規制の整備
 主として投資家保護の観点から、金融商品取引業者には多数の行為規制が課せられています。
 販売・勧誘に際しては、次のような義務があります。
○標識の掲示義務
○広告の規制
 ・金融商品登録業者である旨、登録番号などの表示義務
 ・利益の見込みについて、著しく事実に相違する表示や、著しく人を誤認させるような表示の禁止
○契約締結前の書面交付義務
 ・金融商品取引業者である旨、登録番号などの記載義務
 ・契約の概要や手数料の概要の記載義務
 ・「損失が生ずることとなるおそれ」や「損失の額が、顧客が預託すべき保証金等の額を上回ることとなるおそれ」があるときは、その旨の記載義務
○契約締結時の書面交付義務
○各種禁止行為
・「虚偽のことを告げる行為」や「不確実な事項について断定的判断を提供して勧誘をする行為」の禁止
・勧誘の要請をしていない顧客に対する、訪問・電話による勧誘の禁止(不招請勧誘の禁止)
・契約を締結しない旨の意思表示をした顧客に対する、勧誘継続の禁止(再勧誘の禁止)
○損失補填の禁止
○適合性の原則
 顧客の知識・経験・財産の状況及び契約締結の目的に照らして不適当な勧誘を行い、投資者保護に欠けることのないようにする義務

⑥顧客の属性に応じた行為規制の柔軟化
 利用者保護を前提としつつ、リスクキャピタル供給の円滑化も両立させる観点から、適格機関投資家などのプロの投資家を「特定投資家」として、一般の投資家と区別し、契約締結前の書面交付義務などの行為規制を適用除外しています。

⑦投資性の強い預金・保険などに関する規制の横断化
 預金や保健でも、外貨預金やデリバティブ預金、外貨建て保険・年金や変額保険・年金、のように投資性の強い商品は金融商品取引法の規制対象となりました。

⑧利用者保護のためのその他の制度整備
 金融商品販売法(現行は「金融サービスの提供に関する法律」)も拡充されました。


 この法整備が為された当時、多くの中堅中小企業がデリバティブや変額保険の金融商品の餌食にされていました。
 中小企業経営者にはあまり馴染みのない法律かもしれませんが、金融商品の購入や投資、あるいは新事業として事業型ファンドを企画する際にも関係する法律ですので、ご紹介させていただきました。