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就業規則は労働契約書

「就業規則はあるけど、ちゃんと読んだことないなぁ・・」 そういう経営者の方も多いと思います。

そもそも就業規則とは、法律的には何なんでしょうか? 

経営者が決める会社のルール? 働き方についての取り決め(契約)?

業規則は労働基準法に規定されていますが、その判例法理は立法化されて、労働契約法(2008年3月施行)になっています。同法は、合意原則(第3条)を採っているので、就業規則も基本的には労働契約として、いわば「集団的統一的な労働契約」と考えてください。

労働基準法は、労働条件の最低基準を定める法律なので、行政規制的、強行法規(違反=無効)的な性格の法律です。これに対して労働契約法は、労働契約の内容や効力を定める法律で、私法的効力、民事的な契約ルール、を規定する法律といえます。労働基準法はよく知られていますが、労働契約法のほうは、経営者の方にまだまだ馴染みが薄いようです。でも、労働基準法と同じくらい基本的で重要な労働法といえます。

先ず覚えていただきたいのは、「就業規則の最低基準効」(労働契約法第12条)です。

就業規則の基準より低い労働条件で個別契約しても、その低い部分は無効です。就業規則の基準が代わりになります。これはもともと労働基準法の第93条に規定されていました。

なお、就業規則より高い条件での個別契約は自由です(労働契約法第8条)。

次は、「就業規則の労働契約規律効」(労働契約法第7条)です。

就業規則があれば、その内容が新たに採用する労働者との労働契約の内容となります。但し、その就業規則の労働条件が「合理的」であること、と、その就業規則を「周知」していたこと、が要件です。

なので、採用の際に、就業規則を説明、理解させなくても、その労働条件で契約したことになります。

しかし、実際には、採用の際に就業規則をきちんと読み合わせて説明し、理解して納得してもらうことが、契約としては本筋になります。

業規則に関して実際に最も重要な問題は、「不利益変更」(労働契約法第10条、同第9条)です。


就業規則は、個々の労働者の認識、理解、納得、合意に関わらず、その職場(事業場)で働く労働者全員の労働条件になりますが、その「変更」には、過半数労働組合あるいは過半数代表者の意見を聞くことと、届出しか「要件」とされていません(労働基準法第90条)。

これだけ見ると、就業規則は、集団的統一的労働「契約」でありながら、個々の労働者全員から個別の合意を得る必要もなく、上記要件さえ履践すれば使用者が一方的に変更することも可能で、しかも、労働者に不利益に労働条件の切り下げをすることも可能なように読めます。

これに対して裁判所(最高裁)は、就業規則の「不利益変更」に一定の制限を課す判例法理を積み重ねてきました。これを立法化したものが、労働契約法第9条と第10条です。

先ず、第9条で、使用者が就業規則を一方的に、労働者に不利益に変更することはできない、としたうえで、第10条で、「不利益」と見える「変更」も「合理的なもの」であれば可能とし、その要件を明示しました。その要件とは、

先ず、①「変更の就業規則について労働者に周知」させたうえで、

変更の内容については、②「労働者の受ける不利益の程度」、③「労働条件の変更の必要性」、④「変更後の就業規則の内容の相当性」、を比較衡量し、

手続き面などでの、⑤「労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情」に照らして、

合理的なものであるかどうかが判断されます。

働き方改革やコロナ禍への対応として、企業の賃金制度の見直しがマスコミでも話題になっています。

賃金規定や賃金テーブルは、就業規則の一部なので、賃金体系や賃金制度の変更は、就業規則の変更になります。

就業規則は、従業員労働者との「契約書」であり、会社の働き方の「基本法」とも言えます。

「ちゃんと読んだことないなぁ」という経営者の方は、ぜひ一度、読み直してみてください。