サーキュラーエコノミー 資源循環型経済
人類社会に突きつけられた2つの大きな地球環境問題は、脱炭素と生物多様性ですが、これらを解決するための経済システムとして提唱されているのが、サーキュラーエコノミーです。
昨年(2023)12月19日、環境省から、中央環境審議会循環型社会部会の静脈産業の脱炭素型資源循環システム構築に係る小委員会の資料として、「脱炭素型資源循環システム構築に向けた具体的な施策のあり方について(案)」が公表されました。
今月(2024年1月)18日までパブリックコメントが募集されていましたが、資源循環型社会に向けた、基本的考え方と今後の方向性や主な施策が示されています。
廃棄物やリサイクルに関する最も基本的な法律は、循環型社会形成推進基本法(2000年成立)です。3Rなど、この分野の基本的な理念や考え方が規定されています。この法律に基づき、国は「循環型社会形成推進基本計画」を、概ね5年ごとに定めることになっています。
直近の第四次循環型社会形成推進基本計画(2018年(平成30)6月閣議決定)では、循環型社会の全体像に関する指標として、「入口(資源生産性)」「循環(入口側の循環利用率、出口側の循環利用率)」「出口(最終処分量)」が示されました。
今回公表された案では、「入口側の循環利用率」及び「出口側の循環利用率」について、目標達成が困難な見込みとしており、取り組みを進めるには、大量生産・大量消費型の社会を前提としながら単純に循環利用率の向上を目指すだけでは、天然資源の大量投入の抑制につながらないことも懸念される、としています。
国際的には、資源循環に向けた政策形成が著しく進展していることが、紹介されています。
例えば、
・昨年4月のG7気候・エネルギー・環境大臣会合(札幌)では、「循環経済及び資源効率性原則(CEREP)」が採択され、民間企業向けの循環経済及び資源効率性に関する行動指針が策定されました。
・プラスチック汚染に関する条約策定に向けた交渉が、進展しています。
・バーゼル条約(有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約)においても、一昨年(2022年)6月のCOP15で、従来から規制対象の有害な電子・電気機器廃棄物(e-waste)に加え、非有害なe-wasteも規制対象物となり、来年(2025年)1月から発効予定です。
・化学物質管理の分野でも、従来の「国際的な化学物質管理に関する戦略的アプローチ(SAICM)」の後継となる、新たな枠組みが採択されました。
・循環経済に係る国際標準化の議論が、2018年9月にフランスの提案で設置された国際標準化機構第323専門委員会(ISO/TC323)において、進展しています。
・欧州ではさらに、様々な製品について、再生材の利用に係る定量目標等が決定される動きがあります。例えば、昨年(2023)年7月、欧州委員会が公表した「自動車設計の循環性要件及び廃自動車管理に関する規則案」では、自動車の再生プラスチック最低含有率の義務化等が盛り込まれています。また、同じく昨年7月に欧州委員会が採択したバッテリー規則でも、廃棄された携帯型バッテリーの回収率(2027年末までに63%等)、原材料別の再資源化率(例えば、リチウムの場合2027年末までに50%等)の目標値、リサイクル済み原材料の最低使用割合(例えば、コバルト16%、リチウム6%、ニッケル6%等)が示されています。
このような現状と課題の認識を受け、基本的考え方及び方向性として、質と量の両面で資源循環を高度化させることにより、国内での資源確保、天然資源の消費抑制、最終処分量が最小化された循環型社会を実現する、としています。
そして、主な施策として、「適正処理を確保した上で、国が特に推進すべきもの」として、4つの類型を挙げています。
類型① 動静脈連携の構築
:企業や業種の垣根を越えて、動脈企業と静脈企業が目標を共有しつつ、素材や物品の性質に応じた循環の輪を形成する動静脈連携を構築するパターン
類型② 官民の連携処理システムの確立
:地方自治体が、自らの地域の将来や特徴、市民・消費者の行動等を踏まえつつ、民間活力も活用しながら、資源循環をリードする官民の連携処理システムを確立するパターン
類型③ 静脈産業のカーボンニュートラル化
:廃棄物処理業等において省エネ型の廃棄物処理設備の導入や改修を通じて、静脈産業のカーボンニュートラル化を図るパターン
類型④ カーボンニュートラルに対応する資源循環技術の高度化
:高度な分離・再資源化技術を用いて、今後増加する再エネ設備や重要資源の循環利用を行うパターン
これら民間企業や自治体の取り組みに、国の認定制度を設けるなどして、脱炭素型の資源循環システムの高度化を進め、担い手である静脈産業全体の底上げを進めるべき、としています。
さらに、これらの取り組みを支える施策として、電子マニュフェスト情報などを活用した情報基盤整備、また、取り組みのパフォーマンス評価を適正に行うための施策も示唆されています。
要するに、リサイクル技術の向上とリサイクル率の拡大、ということです。
リサイクル技術の向上には、科学的なリサイクル技術だけではなく、動脈産業や自治体も含め、民間や地域での、連携の仕組みづくりも含めて「技術」の視野に入れたところが目新しいと思います。
ただ、資源循環の輪が本当に円くなる、双方向の連携は、当事者が対等平等でなければ実現できません。静脈産業の社会的地位の向上や、排出事業者の意識変革が不可欠だと思います。
私が理想と思う資源循環社会は、地下資源を掘り起こすことを止め、必要な資源はなるべく地上の自然資源で賄うようにし、資源はすでに掘り起こした地下資源も含めすべて地上で循環させる、というイメージです。
近代の戦争の多くは地下資源の争奪戦だったし、たまたまその場所に国があるからといって地球が創ったものを勝手に自分たちのものにできる、っていうのは、何だか不公平な感じがします。
ただ、この先、しばらくは、レアアースはじめ地下資源にも頼らざるを得ませんから、すでに掘り起こされた地下資源のリサイクル材の、国内や域内での囲い込みが始まるでしょうね。
いずれにしても日本は、いち早く、地下資源に頼らない資源循環社会を構築する必要があると思います。