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労働時間、休憩、残業

 「24年問題」がマスコミをにぎわせています。これは時間外労働の上限規制が猶予されていた事業・業務について、今年(2024年)4月1日から上限規制が適用されことによる、さまざまな問題を指します。
 今回は、日頃のご相談でも多い、労働時間に関する労働基準法の基本の考え方からおさらいしてみましょう。

 労働基準法は、労働者が人たるに値する生活を営むための労働条件の最低基準を定めるもの(労働基準法 第1条)、いわゆるミニマムスタンダードです。

「法定労働時間」と「所定労働時間」
 労基法で、労働時間は「1週間について40時間」「1日について8時間」を超えてはならないとしています(32条)。これを『法定労働時間』といいます。これは、休憩時間を除いて、の時間です。
 就業規則などで、始業時刻と終業時刻を決めていますよね。例えば、始業が8時30分、終業が17時30分とすると(この間は「拘束時間」と呼ばれます)、9時間になりますが、昼休みが正午~13時であれば、8時間になります。
 就業規則等で定める始業時刻から終業時刻までの時間から休憩時間を除いた時間が『所定労働時間』です。

「休憩」
 休憩について労基法は、「労働時間が6時間を超える場合においては少なくとも45分」「8時間を超える場合においては少なくとも1時間」の休憩時間を「労働時間の途中」に与えなければならないとしています。始業8時30分、昼休みを正午~12:45として、終業17時15分でも良いわけです。
 ただ、17時15分を超えて残業になる場合は、労働時間が8時間を超えてしまうので、17時15分から17時30分までを休憩とする必要があります。

「残業」
 「残業」については、「所定労働時間」を超える「残業」と、「法定労働時間」を超える「残業」は、区別しなければなりません。
 よく「残業代」と称される割増賃金も、また、三六協定が必要になるのも、「法定労働時間」を超える「時間外労働」に対してであって、「所定労働時間」を超える時間でも、これにあたらないものがあります。
 例えば、9時始業17時終業で、正午から1時間の休憩時間がある場合、所定労働時間は7時間です。18時まで「残業」したとしても、労働時間は8時間で法定労働時間に納まっているため、17時から18時の労働に対して通常の時間給を支払う必要はありますが、時間外労働の割増賃金(労基法37条)を支払う必要はありません。但し、就業規則等で所定外労働時間にも割増賃金を支払うこととしている場合はそれに従います。

 ここで、就業規則は作成及び届出の義務が「常時10人以上の労働者を使用する使用者」(労基法89条)とされているので、残業の36協定も「ウチは関係ない」と誤解しておられる経営者さんがおられます。しかし、36協定を定める労基法36条には事業規模等の制限がありませんから、労働者に法定労働時間を超えて残業させる場合には必ず36協定(過半数労働組合あるいは労働者過半数代表者との書面協定及び届出)が必要で、これが無いまま法定労働時間を超える時間外労働をさせると、罰則の対象になります。

「上限規制」
 2018年6月成立の働き方改革関連法により、中小企業にも2020年4月1日から施行された時間外労働の上限規制について、おさらいしておきましょう。
 36協定の締結と届出をしても、時間外労働は「月45時間」「年360時間」までが原則です。臨時的な特別事情がある場合でも、特別協定の締結・届出のうえ、年720時間、単月100時間未満(休日労働含む)、複数月平均80時間(休日労働含む)が限度です。
 ただ、月80時間から100時間はいわゆる過労死ラインであり、特別協定は本当に例外的な事態を想定した妥協の産物なので、基本的には、月45時間、年360時間、と考えてください。

「残業管理」
 昭和の高度経済成長時代には、「モーレツ社員」の流行語にみるように、「残業」は社員のやる気と会社の隆盛の象徴でした。でももう、今は時代が代わったし、今の若い人たちの考え方にも合いません。
 ただ、放っておいても自然に残業が減るわけではありません。それはこの間の日本の社会を見れば明らかです。
 だから、中小企業経営者の皆さまには、残業に対する意識を切り替えていただき、意識的に残業をさせない仕組みづくりをされることをお勧めします。
 すぐにできるのは、残業を「事前届け出制」や「許可制」にするルールづくりです。残業する場合には、所定の終業時刻より事前に、残業を要する理由と残業見込み時間を上司や場長に届けてもらい、上司や場長が認めた場合にのみ残業ができるというルールにする方法です。就業規則などで決めておられるところもありますが、残業は労働者の権利ではないので、必ずしも就業規則で定める必要はないと考えます。

最後に
 労基法が第1条1項で「労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を満たすべきものでなければならない」と規定する意味を、もう一度深く考え直したいですね。
 「1日24時間」は、貧富や地位に関わらず、誰にも平等です。24時間のうち8時間は睡眠た食事など生理的に必要な時間として、残り16時間を公私で分けて、8時間は労働時間、8時間は自分のための時間、というのは、とても理に適っていると思います。労働時間が8時間より少なくても経済社会が維持できるのであれば、それに越したことはありません。労働時間が8時間を超えない、というのは、本当によく考えられた数字だなぁといつも感心しています。