ブログ

SDGsこそ人類が生き延びるための解

 大阪ディスプレイ協同組合の顧問をさせていただいています。今年度、機関誌にSDGsの判りやすい解説を、とご依頼いただきました。今回は、その4月号に掲載していただいた原稿をアレンジしたものを転載します。
 SDGsについて私流の理解になりますが、おつきあいくださいね。

 SDGsとは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略というのは、もうご存じですよね。人類社会が2030年までに世界中で実現すべき共通の目標(ゴール)、いわば、人類が共有すべき未来社会ビジョン、です。
 これは2015年9月の国連総会で「全会一致」で採択されました。国連加盟国193か国全部が賛成したのです。スゴイ!ですよね。もちろん、ロシアも北朝鮮も賛成したわけです。

 最近までの研究で、現在の地球上の「人間」は全員、肌の色や見た目がどんなに違っても、「ホモサピエンス」という同じ「種」であることが判明しています。なのに、人間の歴史は戦争の歴史といっても過言ではありませんでした。食料や資源だけでなく、価値観や宗教の違いも、戦争の理由になってきました。
 しかし、ユヴァル・ノア・ハラリ氏も指摘するように、人間の長い歴史を大きく眺めてみれば、人類は争いを繰り返しながらも、より大きな人数の組織に統合し、全体としては融和に向かい、そうして社会を発展させてきました。長い人類の歴史に鑑みれば、世界中の人類が共通の目標を持ち、理想の未来社会ビジョンを共有できたことは、人間社会が一つの到達点に至った、とても画期的なことだといえます。

 今の日本人から見れば、SDGsの内容は当たり前のことが書いてあるだけに見えるかもしれません。
しかし、世界を見渡せば、今も、経済格差や女性差別に肯定的な価値観を持つ人々もたくさんいます。
 現実は、イランやアフガニスタンでは女性が抑圧され、天然痘根絶で感染症を克服できたかと思いきや新型コロナパンデミックに陥り、ロシアは信じがたい論理でウクライナに侵攻しました。SDGsの理想に反して、世界の現実は、格差と分断がより深刻化しています。
 そして、人類社会の基盤である地球環境も、人類が排出した温暖化ガスによって気候危機が生じ、将来の人類社会の生存基盤が危ぶまれる状況にあります。

 今、パンデミック、格差と分断、気候危機、の何重もの苦境に喘ぐ人類社会にとって、SDGsこそ、未来へ生き延びる唯一の解、一条の光のように思えます。
 SDGsの目標年限である2030年は、地球温暖化問題に対しても「カーボンハーフ」(2030年に温暖化ガス排出を約半減)の目標年限になっています。
 SDGsの理想社会を将来世代に引き渡せるか、それとも失敗して取り返しのつかない未来を迎えるのか、人類社会は、まさに今、その岐路に立っています。

 SDGsが描く理想の未来社会とは、どんな社会なのか?
 SDGsの理念、スローガンは「誰一人取り残さない」ですよね。私はこれを、いつの時代、どこの地域、どんな親のもとに生まれたとしても、だれもがその意思で、能力を開花させ、自分の人生を切り開いていける社会、だと解釈しています。SDGsの17のゴールはそんな社会の「要素」と考えれば、イメージできませんか?

 SDGsのもとは、国連が途上国を対象に2015年までに達成すべきとしたミレニアム目標「MDGs」です。これに、人類の生存基盤である地球環境問題と、先進国にも共通する社会問題、を含めて、設定されました。
 17もありますが、5つの「P」の切り口で考えると覚えやすいです。
 1「貧困」から6「安全な水とトイレ」は、Peopleつまり人間が生きるための条件、これらはMDGsの深堀りです。
 7「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」から12「つくる責任つかう責任」は、Prosperityつまり豊かさ、より人間らしく生きるための条件で、これらは先進国にも共通する、人類社会の比較的新しい問題です。
 13「気候変動に具体的な対策を」から15「陸の豊かさも守ろう」は、Planet言うまでもなく地球環境問題です。
 そして、16のPeace平和はSDGsの大前提であり、17のPartnershipパートナーシップはSDGsを実現するための手段、方法ということになります。

 人類がようやく、理想の社会ビジョンを共有するSDGsを手にした一方で、ロシアがウクライナに侵攻してしまい、その衝撃や影響は徐々に人類社会を蝕んでいます。
 人類は今、気候変動という喫緊の課題に迫られながら、国際社会分断の危機とパンデミック、その渦中にあってもSDGsの理想を実現できるかどうかの岐路に立たされています。
 そんな大きな話をされても・・と思われるかもしれませんが、正解は足もとにあると思います。
 自分から自社から、SDGsの出来ることから始める、これが私たちホモサピエンスの未曽有の危機を救う、小さいけれど確実な一歩になると思います。
 あきらめないで、がんばりましょう!