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経営者保証改革プログラム

昨年12月23日、金融庁・経産省・財務省から「経営者保証改革プログラム~経営者保証に依存しない融資慣行の確立加速~」が示されました。
全国銀行協会と日本商工会議所が「経営者保証に関するガイドライン」を策定・公表したのは2013年12月ですが、10年目を迎える今こそ徹底させるぞ!という意気込みを感じます。
「経営者保証改革プログラム」の策定について:金融庁 (fsa.go.jp)

プログラムには4つの柱があります。
1.スタートアップ・創業 ~経営者保証を徴求しないスタートアップ・創業融資の促進~
2.民間金融機関による融資 ~保証徴求手続の厳格化、意識改革~
3.信用保証付融資 ~経営者保証の提供を選択できる環境の整備(希望しない経営者保証の縮小)~
4.中小企業のガバナンス ~ガバナンス体制の整備を通じた持続的な企業価値向上の実現~

このうち、特に中小企業経営者の方々にお知らせしたいのは、「2. 民間金融機関による融資~保証徴求手続の厳格化、意識改革~」です。
ひと言でいうと、融資の取引文化の原則を転換する、個人保証を原則から例外にする、というもので、その内容を以下にご紹介していきますね。

(1)説明義務の具体的強化(今年4月~)
個人保証をとる場合には、その必要性について、1)どの部分が十分でないために保証契約が必要となるのか 2)どのような改善を図れば保証契約の変更・解除の可能性が高まるのか を個別具体的に説明しなければはならず、その結果等は記録して、記録した件数を金融庁に報告しなければなりません(今年9月期実績報告分より)。
「経営者保証専用相談窓口」が金融庁に設置され、適切な説明がないまま経営者保証をとられた、などの相談ができます。
対応が悪いと金融庁が判断した場合には(前記プログラムの書き方は「状況に応じて」ですが・・)、その金融機関に対して「特別ヒアリング」が実施されます。

(2)ガイドライン徹底のための「取組方針」の作成・公表の事実上義務付け
前記プログラムには「金融機関に対し『経営者保証に関するガイドラインを浸透・定着させるための取組方針』を経営トップを交え検討・作成し、公表するよう金融担当大臣より要請」(太字は筆者)と書かれていますが、これって事実上の義務付けですよね。
公表はもちろん対外公表ですから、中小企業経営者の皆さんは一度、自社の取引先金融機関の「取組方針」を確認されてみてはいかがでしょうか?

(3)事業全体を担保に金融機関から資金を調達できる制度
前記プログラムでは「経営者保証に依存しない新たな融資手法の検討(事業成長担保権(仮))」として「金融機関が不動産担保や経営者保証に過度に依存せず、企業の事業性に着目した融資に取り組みやすくするよう、事業全体を担保に金融機関から資金を調達できる制度の早期実現に向けた議論を進めていく。」としていたところ、今月10日、金融審議会「事業性に着目した融資実務を支える制度のあり方等に関するワーキング・グループ」から報告書が公表されました。(まだ読めてません<m(__)m>読んだらブログで報告しますね、)
金融審議会「事業性に着目した融資実務を支える制度のあり方等に関するワーキング・グループ」報告の公表について:金融庁 (fsa.go.jp)


もともとガイドラインでも、経営者保証をとる際の説明義務については「5.経営者保証の契約時の対象債権者の対応 (1)主たる債務者や保証人に対する保証契約の必要性等に関する丁寧かつ具体的な説明」として示され、ガイドラインQ&Aでも、次のように説明していました。
『例えば、4(2)イ)~ニ)の要件に掲げられている要素のどの部分が十分ではないために保証契約が必要なのか、どのような改善を図れば保証契約の変更・解除の可能性が高まるのかなどを、対象債権者が策定している基準等を踏まえて、債務者の状況に応じて個別に具体的に説明することが求められ、例えば以下のような対応が考えられます。
➢4(2)イ)、ロ)、ハ)に関し、主たる債務者が抱えている問題点とその解消に向けて 主たる債務者が取り組むべき対応等について、助言を行うこと((ハ)の資産・収益 力については可能な限り定量的な目線を示すことが望ましい)。
➢4(2)ニ)について、対象債権者が必要とする情報の種類、情報提供の頻度を示すこと。
  **注⇒「上記の4(2)イ)ロ)ハ)ニ)は次のとおり。
    イ) 法人と経営者個人の資産・経理が明確に分離されている。
    ロ) 法人と経営者の間の資金のやりとりが、社会通念上適切な範囲を超えない。
    ハ) 法人のみの資産・収益力で借入返済が可能と判断し得る。
    ニ) 法人から適時適切に財務情報等が提供されている。 』

つまり、ガイドラインで当初から示されていた説明義務について、10年経っても各金融機関で個別具体化して徹底することができなかった、ということだと思います。
当時も、私は、この説明義務こそ事業継続中の中小企業には武器になるなと思ったので、知り合いの経営者さんに「とりあえず経営者保証を外してほしい旨を取引のある金融機関に申し入れてみてはどうですか? 今すぐ外してくれないにしても、ガイドラインによれば、外せない理由や条件を個別具体的に説明する義務が示されているので、その説明をしてもらう価値はありますよ」とアドバイスしました。
ある経営者さんは、実際に申入れをしてみたそうです。金融機関によっては、支店長クラスでもそのような義務があることを知らなかったそうです。しかし、その後まもなく、この経営者さんは、個人保証を外してもらえたそうです。
ある経営者さんには、金融機関にそんなことを言ったらどんな目に遭わされるかわからない、と反対に怒られました。今でも、そう考える中小企業経営者さんは多いと思います。
ただ、今回のプログラムについて政府から金融関係団体等に向けて出された要請には、「8.民間金融機関においては、今般の監督指針改正が個人保証を制限する趣旨でないことを十分に理解し、貸し渋り、貸し剥がしを行わないことは勿論のこと、そのような誤解が生じることのないよう留意すること。」と明記されています。
ガイドラインの要件(①法人・個人の資産分離 ②財務基盤の強化 ③経営の透明性確保)が十分でなくても、何をどうすれば外せるのか、取引先金融機関に個別具体的な説明を求めてみられてはいかがでしょうか?