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熱中症ガイドライン

 昨年(2025年)6月1日、熱中症対策を強化した改正労働安全衛生規則(612条の2)が施行され、今年(2026年)3月18日、厚生労働省は「職場における熱中症防止のためのガイドライン」を策定、公表しました。

 熱中症とは、「高温多湿な環境下において、体内の水分及び塩分(ナトリウムなど)のバランスが崩れたり循環調節や体温調節などの体内の重要な調節機能が破綻するなどして発症する障害の総称」と定義されています。(後記の厚労省サイト講習動画より)

 高温多湿(暑熱環境)での深部体温上昇に対して、身体は2つの反応をします。
 ひとつは、冷たい血液を循環させて体温を下げようと、皮膚血管を膨張させます。しかし、血管の容積が増えても血液の量が変わらないため、脳に回すべき血液が足りなくなってしまいます。
 もう1つは発汗です。汗の蒸発による気化熱で、熱を下げようとします。ただ、汗とともに水分と塩分が失われ、血液中の水分・塩分が不足していきます。

 皮膚血管膨張によって生じる初期症状は、「熱失神」と呼ばれ、めまい、立ち眩み、生あくび、です。
 大量の発汗で塩分・水分が失われたときに、水分だけを摂ってしまうと、血液中の塩分濃度が低くなってしまい、筋肉の活動に支障が生じ、「熱けいれん」(けいれん、こむらがえり)があらわれます。
 ここまでの症状が「重症度・Ⅰ度」とされ、熱中症リスクを感知できる最初の症状になります。
 この段階であれば、現場で対応可能とされ、適切に対応すれば重症化を防ぎ、症状を改善させることができるとされています。

 重症度Ⅰ度からさらに、塩分・水分の不足が進行すると、「脱水症状」(血液がどろどろの状態)に陥ります。身体の調節機能が失われ、「熱疲労」(倦怠感、虚脱感、頭痛、嘔吐)の症状があらわれます。
 こうなると「重症度・Ⅱ度」となり、脱水のため発汗できず、深部体温がさらに上昇していくため、現場対応では無理で、医療機関への搬送が必要です。

 さらに暑熱暴露が続くと、深部体温上昇が止まらなくなり、「重症度・Ⅲ度」以上に進行してしまいます。
 高体温によって身体のあらゆる器官に障害が生じる「熱射病」になり、重篤な後遺症が残ったり、最悪の場合は死に至る、大変危険な状態に陥ります。

 今回の「職場における熱中症防止のためのガイドライン」は、熱中症がこのように、重症化させると極めて危険である反面、初期症状の段階において適切な対処をすれば、重症化を避けられること、そして、予め対策すれば発症を抑制できることをから、熱中症予防の目的で、策定、公表されました。

 では、その概要をご紹介しましょう。

 先ずは、熱中症リスクの評価、をします。
 職場の暑熱に関する有害性を特定します。有害要因は、①高温多湿な作業環境、②連続作業、③通気性や透湿性の低い衣服や保護具、④身体作業負荷の大きい作業、です。
 評価のポイントは、WBGT値(暑さ指数)の把握、で、具体的には、「JIS B 7922 等に適合した指数計で、作業現場で実測」することが基本とされています。
 ガイドラインには、身体作業強度及び暑熱順化の状況に応じたWGBT基準値が示され、これに、着衣補正値を加えるべき、とされています。

 次に、熱中症リスクに応じた措置、を講じます。
・労働衛生管理体制の確立等として、熱中症予防管理者等の選任など、作業手順や作業計画の策定、報告体制の整備及び手順等の作成並びに周知(労働安全衛生規則612条の2)、を行います。
・作業環境管理として、WBGT値の低減、休憩場所の整備等、の対策を行います。
・作業管理として、作業時間の短縮等(休止時間や休憩時間の確保)、計画的に暑熱順化、プレクーリング、水分塩分の定期的接種、服装の見直しや冷却機能服の採用、作業中の巡視、業種や作業に応じた工夫、を行います。
・健康管理として、健康診断結果に基づく対応、日常の健康管理等、作業従事者の健康状態及び暑熱順化の状況等の確認、を行います。
・労働衛生教育として、熱中症予防管理者労働衛生教育、職長等向け教育、作業従事者向け教育、を簡単な教材でも繰り返し行うようにします。
・異常時(熱中症による健康障害発生時)の措置については、ガイドラインの最後に対応計画の手順例が示されています。

 最後に、
 政府も昨今の熱中症による死傷者数の増加に対し、予防や対策の普及・啓発に力を入れています。
 厚生労働省の「職場における熱中症予防情報」サイトは、講習動画も充実しています。
 情報収集や社内研修にも役立つと思います。

厚生労働省 専用サイト 職場における熱中症予防情報

「職場における熱中症防止のためのガイドライン」 r8_neccyusho_guidelines.pdf

職場における熱中症防止対策に係る検討会 報告書|厚生労働省