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廃棄物の排出事業者責任

事業において生じたゴミ(廃棄物)は、廃棄物業者さんに引き渡せば終わり、ではありません。

「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」(廃棄物処理法、廃掃法)は、次のように定めています。

(事業者の責務)第3条
 事業者は、その事業活動に伴つて生じた廃棄物を自らの責任において適正に処理しなければならない。

つまり、自社が出すゴミについては、廃棄物業者さんに処理委託する場合も、最終的に適正処理されるまで、自社自身で適正処理するのと同じ責任があります。これを「排出事業者責任」といいます。

責任強化の歴史
不法投棄や不適正処理が後を絶たず、その原因として、処理費用の買いタタキ、委託後は処理業者の責任という事業者意識、が指摘され、特に平成以降は数次の法改正により、排出事業者責任が強化されてきました。
平成9(1997)年には、それまで特別管理産業廃棄物だけだったマニフェスト(管理票)を産業廃棄物全般に義務付け、電子マニフェスト制度を導入、措置命令の対象者拡大、原状回復の代執行ルール化、産業廃棄物原状回復基金制度の導入、の改正がなされました。
さらに、
平成12(2000)年には、排出事業者責任のさらなる徹底、マニフェスト制度の拡充(最終処分までの確認を義務化)、措置命令の対象者を大幅に拡大、の改正がなされました。

措置命令
不法投棄や不適正処理が行われ、生活環境保全上の支障が生じるおそれが認められる場合に、委託基準違反の排出事業者、マニフェスト義務違反の排出事業者、も「支障の除去等の措置命令」の対象となります。(第19条の5)
さらに、排出事業者が委託基準やマニフェストを遵守していたとしても、適正な対価を負担していないとき、不適正処理を知ることができたとき、最終的適正処理を担保すべき必要な措置を怠ったとき、には「支障の除去等の措置命令」の対象となります(第19条の6)

平成28(2016)年には、ココイチカレーの㈱壱番屋が廃棄した冷凍ビーフカツが、許可業者のもとで不適正に転売された事件が、大きく報道されました。ご記憶の方も多いと思います。
この事件で環境省が公表している総括では、㈱壱番屋(排出事業者)の委託方法においても、発酵が難しいことが明らかなものも処理委託していること、現地確認や料金が適切であったか疑問、ポリ袋に梱包されているなど商品と見える状態で処理委託されたものもあったこと、などが指摘されています。

廃棄物とは
「占有者が自ら利用し又は他人に有償で譲渡することができないために不要となったものをいい、これらに該当するか否かは、その物の性状、排出の状況、通常の取扱い形態、取引価値の有無及び占有者の意思等を総合的に勘案して判断する」と定義されています。つまり、その物を持っている人が主観的にも要らないと考え、その物自体にも客観的に価値が認められないもの、ということです。ただ、実際には判断が難しい場合も多く、廃棄物処理法のもっとも悩ましい点といえます。

3R
排出事業者のまずもっての責務は、リデュース(廃棄物削減:なるべく廃棄物を出さない)、リユース(再使用:使えるだけ使う)、リサイクル(再生利用、再資源化)、の3Rの徹底です。
廃棄物処理法も、最初にご紹介した第3条(事業者の責務)の2項で、再生利用等による減量、ライフサイクルアセスメント、適正処理のための情報提供、を定めています。

先ずは分別
廃棄物は、産業廃棄物(さらに特別管理産業廃棄物)と一般廃棄物(さらに特別管理一般廃棄物)で区別されており、それぞれ処理の基準や許可が違います。なので、排出する際には、先ず、産業廃棄物(さらに特別管理産業廃棄物)と一般廃棄物(さらに特別管理一般廃棄物)をきちんと分類しましょう。
産業廃棄物とは、事業限定の無い12種類(燃え殻、廃プラスチック類、他)及び事業限定のある7種類(紙くず、動物性残さ、他)とこれら処分のために処理したコンクリート固形化物、の、政令で定められた20種類、
特別管理産業廃棄物とは、産業廃棄物のうち、爆発性、毒性、感染性、のある、政令で指定された15種類、
です。
一般廃棄物とは、産業廃棄物以外の廃棄物です。(第2条2項)

産業廃棄物である物を、一般廃棄物として処理委託してしまうと、委託基準違反として5年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金、など罰則があります(25条)

産業廃棄物は、その種類が細かく決められていますから、きちんと分別して、その種類ごとに処理委託してマニフェスト(管理票)を発行しなければなりません。マニフェスト(管理票)の不交付や不記載、虚偽記載にも1年以下の懲役または百万円以下の罰金があります。(第27条の2)

ここで、土木建築工事については、工事に伴って排出される廃棄物の「排出事業者」は、実際の施工を下請け業者が行っているばあいでも、発注者から直接に工事を請け負った元請け業者とされています。(第21条の3)

チェックリスト 
ココイチカレーの㈱壱番屋の事件を受けて、平成29(2017)年6月に「排出事業者責任に基づく措置に係るチェックリスト」が公表されました。コロナ禍でのオンライン活用の普及もあり、今年3月に一部改訂され、最新版が公表されています。
チェックリスト000126051.pdf (env.go.jp)

排出事業者の3大責任義務である、保管基準、委託基準、マニフェスト交付、について、チェックリストからポイントをご紹介しますね。

保管基準 
廃棄を決めたときから廃棄物処理業者さんに引き渡すまでの間に関する保管基準です。
ポイントは、生活環境保全上の支障を生じさせないこと、です。囲いや掲示を施し、飛散、流出、地下浸透、悪臭、害虫害獣の発生、などを生じさせないようにします。
石綿含有物、水銀使用製品、の分別等も必要です。

委託基準 
処理委託する廃棄物についての許可証は確認してくださいね。
委託契約はそれぞれ、排出事業者と収集運搬業者、排出事業者と処分業者、で、直接にする必要があります。(第12条5項)
法定記載事項を網羅した委託契約書も作成しなければなりません。公益社団法人全国産業資源循環連合会のサイトに委託契約書のひな型があります。委託契約書等の保存期間は5年です。
問題は委託料金ですよね。
委託基準に金額等の定めはありませんが、不適正処理された場合に「適正な対価」を負担していないときは「支障の除去等の措置命令」の対象となります。「適正な料金」とは、少なくともその地域の相場の半値以下でないこと、で、事業系一般廃棄物の市町村での処理料金を参考にしたり、合い見積もりをとったり、してください。

マニフェスト(産業廃棄物管理票) 
マニフェスト(管理票)は、産業廃棄物の種類ごと、運搬先ごと、いわばトラックごとに交付する必要があります。電子マニフェストの場合、引渡し後3日以内に情報処理センターへ登録します。
きちんと分別されていることが前提になります。
紙マニフェストの場合、受託業者さんからの返送についても、返送期間の管理や保存(5年)を忘れないようにしてください。

現地確認等による処理状況の確認 
排出事業者責任は、委託した後も最終処分まで、適正処理の責任範囲です。(第12条7項)
確認は、形式的でなく実質的に行う必要があります。オンラインやホームページなどデジタル技術の活用も認められるようになりました。

最後に、委託業者さん選び 
産業廃棄物については、優良産廃業者認定制度がありますので、それを参考にするのも良いです。
ただ、優良業者に任せていれば安心、というだけではありません。
環境省がYouTubeで、委託先業者さん選定実務の実際を動画で公表しています。
え、ここまでやらなアカンのン?と思われるかもしれませんが、模範的実務として参考になります。
 産業廃棄物を排出する事業者の方に – YouTube
とかく廃棄物処理には費用をかけたくないのが人情ですが、料金の安さだけで業者さんを選定するとトンでもないことになりかねません。
必要コストとして、信頼できる業者さんを選びましょう。