ブログ

区分所有法制が改正されます

 マスコミでも報道されていますが、分譲マンションなどに適用される「建物の区分所有等に関する法律」(区分所有法)等の改正が議論されています。区分所有法は、区分所有建物である商業ビルにも適用されます。
 現在、法制審議会区分所有法制部会で議論されていますが、今年2023年6月8日の第9回会議に中間試案(案)が示されました。
 7月上旬に公表され9月上旬までの2か月間のパブコメを経て、来年2024年の通常国会に、改正法が提出される予定です。

改正の背景その1 マンションの高経年化
 部会資料によると、2021年末時点で築40年以上の高経年マンションは115.6万戸、これはマンションストック総数の約17%にあたり、これが2031年には249.1万戸、2041年には425.4万戸に急増するのだそうです。
 築40年以上になると、漏水や雨漏り、給排水管の老朽化による漏水、外壁等の剥落、鉄筋の露出や腐食、といった、生命・身体・財産に影響する問題が増えてくるのだそうです。
 他方で、2022年4月時点におけるマンションの建替え実績は累計で270件、約2万2200戸にすぎません。
 ただ、建替え実績を分析すると、1990年代以前の建替え事業では、建替え前の容積率に余裕があったため、建替後に住戸数や住宅床面積が増えていましたが、2000年代以降の建替え事業では、新たに利用できる容積率が小さくなっている傾向がみられ、建替え後のマンションで新たな入居者に販売できる住戸の面積が減少し、その結果もあって、マンション建替え事業の実施にあたって必要となる区分所有者の負担額は近年増加傾向にあり、2017年から2021年の平均負担額は2000万円弱にまで跳ね上がっています。

改正の背景その2 区分所有者の高齢化
 国土交通省の「平成30年度マンション総合調査」によれば、完成年次の古いマンションほど所在不明・連絡先不通の住戸がある割合、あるいは、賃貸住戸の割合、が高くなる傾向があるそうです。
 また、区分所有者の集会への参加率についても、同省のアンケート調査によると、高経年マンションになるほど投票率が低下する傾向にあり、上記総合調査では、大規模(総戸数が76戸以上)区分所有建物では、集会出席者の割合が少なくなる傾向があるのだそうです。

改正の主なポイント
 現行法で、区分所有建物の管理や再生には、多数の賛成(区分所有者及び議決権の5分の4以上)や全員の同意が必要とされています。
 しかし、所在不明・連絡先不通の区分所有者(所在等不明区分所有者)や、集会に出席せず議決権行使もしない区分所有者(不参加区分所有者)は、事実上「反対」と同様に扱わざるを得ず、決議に必要な賛成数を確保できないため、円滑な管理や再生などができないことになります。
 このような理由で、今回の改正は以下の3つの視点から為されています。
1)区分所有建物の管理の円滑化
2)区分所有建物の再生の円滑化
3)被災した区分所有建物の再生の円滑化

中間試案(案)の全部を紹介するのは大変なので、主な点だけ、ご紹介しますね。

1)区分所有建物の管理の円滑化
・所在等不明区分所有者を集会の決議の母数から除外する仕組みとして、管理者または理事や他の区分所有者が裁判所に請求して、除外決定の裁判を得られる制度が創設されます。
・出席者の多数決での決議を可能とする仕組みが導入されますが、対象となる決議の範囲にまだ議論があります。
・区分所有建物の管理に特化した財産管理制度として、所有者不明専有部分管理制度、管理不全専有部分管理制度、管理不全共有部分管理制度、が、新たに創設されます。いずれも、裁判所の管理命令によって管理人が選任されます。
・共有部分の変更決議(例えば、共有部分の大規模耐震補強工事、階段室のエレベーター化、など)の多数決要件が緩和されます。

2)区分所有建物の再生の円滑化
・現行の区分所有法第62条第1項は、建替え決議の多数決要件を4/5としていますが、これが緩和されます。但し、緩和要件については、単純に3/4とする、あるいは、耐震性や防火性などの危険があることを要件として3/4あるいは2/3にする、など、まだ議論があります。
・現行の区分所有法では、建替え決議がなされても分譲貸しの賃借権は当然に終了しませんので、その消滅のさせ方が検討されています。
・建物及び敷地の一括売却や建物取壊しについて、現行区分所有法には規定が無いので全員同意が必要と解され、一棟リノベーションについても結局は全員同意が必要となりますが、これらが多数決によって進められるようになります。

3)被災した区分所有建物の再生の円滑化
・政令で定める災害により大規模一部滅失した場合、建替え決議(現行被災区分所有法に無く創設)、建物敷地売却決議(現行は4/5)、建物取壊し敷地売却決議(前同)、取壊し決議(前同)、滅失共有部分復旧決議(創設)、の多数決要件が2/3になります。
・同じく全部滅失した場合、再建決議、敷地売却決議、の多数決要件が、現行の4/5から2/3に緩和されます。

 なお、改正論点は以上の他にもあります。
 詳しく知りたい方は「中間試案(案)」を直接、見てくださいね。

中間試案(案)001397472.pdf (moj.go.jp)
法務省:法制審議会-区分所有法制部会 (moj.go.jp)