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「地域の課題」が見えていますか?震災後10年の南三陸に学びました。

小企業家同友会全国協議会の環境経営部会では、毎年、各地で先進的な取り組みをしておられる会員企業に訪問して、その環境経営実践の見学会を恒例行事にしてきました。今年はコロナ禍で訪問が難しいところ、宮城同友会の御尽力で、復興10年で海里山の地域循環経済を構築した南三陸町をテーマに、オンライン見学会をお願いすることができました。南三陸町の会員企業家3名の方から、パワーポイントやズームを駆使した充実したビジュアルとともに、環境経営の実践報告をしていただきました。カキ養殖業を営む「後藤海産」代表の後藤清広氏、地元で運送業を営む有限会社山藤運輸の代表取締役佐藤克哉氏、地元で代々続く林業家、株式会社佐久の専務取締役佐藤太一氏、です。

南三陸町は、周囲を山に囲まれ、志津川湾を抱く、山と海の自然に恵まれた地勢で、人口約1万2500人の町です。防災庁舎の被災で記憶されている方も多いと思います。震災前は、自然の豊かさは「あってあたりまえ」で、過疎化高齢化が止まりませんでした。カキ養殖は過密飽和状態、林業もブランド杉を抱えながら振るわず、運送業もやりがいを感じられない仕事、だったそうです。そしてあの東日本大震災、津波は陸上の経営資源を根こそぎ奪っていきました。

残された街に残された命、生きて暮らしを続けるしかない以上、震災前に戻るだけではない、子供たちが誇りを持てる町にしたい、「地域を良くしたい」が生き残った人々の共通の思いだったそうです。

カキ養殖業の後藤氏は、海の中は予想外にきれいだと判り、仲間の養殖業者に呼び掛けて、漁業権や筏の権利をすべて返上させての改革を始めました。一匹狼、早い者勝ち、自分さえよければ、の漁師根性に意識革命を迫りました。それはたった一年で結果を出さなければ誰もついてこなくなる厳しい挑戦でした。行政の復興支援事業やGPS(筏の適正配置)も活用しました。そして、2016年3月、宮城県漁業協同組合志津川支所戸倉出張所が管轄するマガキ養殖が、二枚貝養殖では日本で初めてのASC認証(養殖版海のエコラベル)を取得しました。震災前に比べて、生産量は2倍、経費は4割削減、一日6時間労働で日曜休みを実現し、今では20代30代の後継者候補が3割以上を占めるまでになりました。震災前に3年かけて育ててもバイヤーから「県内最悪」と酷評されたカキが、今や世界に通用するブランドガキに育っています。

運送業の佐藤氏は、物を運ぶだけの自社事業に満足できないでいましたが、震災のときに救援物資を避難所に届けて涙ながらに感謝され、自社本業に自信と誇りを持てるようになりました。南三陸町が主導するバイオマス産業都市構想に共感し、町の生ごみをバイオガス施設へ、バイオガス施設から液肥を農地へと、運送業でバイオマス資源の町内循環を担うことで、今や町に無くてはならない存在です。さらに、液肥を届けた農家から、高齢化で液肥の散布が困難と言われ、専用の散布車を開発して代行するなど、新しい事業も次々と拡がっています。

林業家第12代目の佐藤太一氏は、津波で山林以外の経営資源を失い、本業に徹することを決意しました。2015年10月、南三陸森林管理協議会として、宮城県で初めてのFSC認証を取得しました。ブランド杉の南三陸杉を育成しながら、チェンソーオイルには生分解性の植物油を使い、豊かな下層植生にも配慮して、野鳥や小動物と共存する森林管理をしています。木材生産現場だけではない森林の多面的機能をより多くの人に理解してもらうため、企業や地元小中学校のガイドツアーも行っています。また、地元他団体とも連携して、イヌワシプロジェクトにも取り組んでいます。

オンラインという制約はありましたが、本当に素晴らしい内容で、とっても感動しました。復興は震災前に戻るのではない、身内や知人を亡くしながらも子供たちが誇れる町を、の強い思いに思わず涙が溢れてしまいました。

私に残ったキイワードは「地域課題」でした。

震災前から過疎化高齢化が進み、疲弊していた地域経済、自然は素晴らしく豊かなのに、若者は出て行ってしまう。震災を生き残った人々を結び付けた強い思いは「地域を(震災前より)良くしたい」ということだったと思います。

翻って自分に突きつけられた問いは「自分は地域の課題が判っているか?」でした。

そもそも、私にとっての「地域」とはどこなんでしょう? 

大阪市?北区? それとも大阪府?関西? それさえ良く判っていません。

今、コロナによって東京一極集中の弊害が誰の目にも明らかとなりました。「第二の都市」大阪は、これをどう考えるべきでしょうか?

問題は、「東京」ではなく、「都市」と「集中」です。

コロナ前、過疎高齢化に悩んでいた地方にとって、ポストコロナは豊かな自然と地域資源を生かして起死回生を図るチャンスになるかもしれません。昨年9月に視察訪問したデンマークでは、ロラン島で「これからは地方と都市の地位が逆転する時代」と言われました。

ロラン島(デンマーク)気候センター レオ市議とニールセン北村さん

都市と地方の地位が逆転するポストコロナ時代、大阪はどのように生き残るべきでしょうか?