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2030カーボンハーフ待ったなし(IPCC第6次報告書)

3月20日、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の第6次評価報告書の統合報告書が公表されました。

人間活動が温室効果ガス(GHG)の排出などによって地球温暖化を引き起こしてきたことは疑う余地がないこと、世界の平均気温は産業革命のころに比べてすでに1.1℃上昇していること、が明らかにされました。

IPCC(気候変動に関する政府間パネル)とは、WMO(世界気象機関)とUNEP(国連環境計画)によって1988年に設立された政府間組織です。世界の政策決定者に、気候変動に関する最新の科学的知見の評価を提供することで、各国政府の気候変動に関する政策に科学的な基礎を与えることを目的としています。
人類はようやく、政治を為政者と大衆の欲望から切り離し、科学にもとづく理性的な意思決定、にステージアップするための仕組み、を構築できた、と言えます。

「気候変動に関する最新の科学的知見」は、世界中の研究者が協力して、権威ある科学誌に掲載された論文等にもとづいて、評価報告書にまとめられます。
第6次評価報告書の執筆には、世界各国の第一線の研究者、約800名が参加しました。
まさに、現在最高の、人類英知の結晶、なのです。

では、その内容を、私の視点で、ピックアップしてご紹介しますね。

現状
パリ協定で限界とされた1.5℃~2℃に対し、冒頭に紹介したとおり、すでに1.1℃も上昇してしまいました。世界中で、極端な暑熱の増加、海洋上層部の酸性化、海水面の上昇、氷河の後退、豪雨の増加、など極端な現象が生じています。
各国の削減目標(NDCs「国が決定する貢献貢献」)を実現できたとしても、温暖化が21世紀の間に1.5℃を超える可能性は高く、そうなると2℃より低く抑えることも、困難になります。
温室効果ガス排出に寄与もしていない、先住民、小規模食料生産者、低所得世帯、が、むしろ多大な損失や損害を被っており、とても不公平です。
また、将来世代ほど気候変動の酷い影響を受けることになります。孫に合わせる顔もありません。

出典:IPCC第6次統合報告書政策決定者向け要約の環境省他による暫定和訳(後掲)

この10年が勝負!
温暖化を1.5℃と2℃に抑えるには、この10年間にすべての部門において、急速かつ大幅、緊急の温室効果ガスの排出削減が必要です。遅れれば遅れるほど、損失や損害は大きくなり、対策の可能性も狭くなります。
「全ての人々にとって住みやすく持続可能な将来を確保するための機会の窓が急速に閉じている」と表現されています。
そして、カーボンハーフからカーボンニュートラルに至る具体的な削減量も示されました。

出典:IPCC第6次統合報告書政策決定者向け要約の環境省他による暫定和訳(後掲)
出典:IPCC第6次統合報告書政策決定者向け要約の環境省他による暫定和訳(後掲)

IPCC第6次統合報告書政策決定者向け要約の環境省他による暫定和訳と概要版は、ここにあります。
000127495.pdf (env.go.jp)
000126429.pdf (env.go.jp)

昨年あたりから、世界の政治・経済・金融は、2050カーボンニュートラルに急旋回を切りました。
この報告書によって、2030カーボンハーフの実現こそ、勝敗の分かれ目であることが明らかとなりました。

先日、ファミレスの後ろの席で、したり顔の高齢男性が同席の女性に「温暖化なんてね地球の歴史で何度もあったことだから、マスコミが騒ぐのはウソで、大したことないよ」なんて放言していました。
お気の毒に、この方にはお孫さんもいらっしゃらないのでしょうか?

私は、2030年までの7年、まだ見ぬ孫やひ孫を思いながら、合わせる顔もない、なんてことにならないよう、精一杯、できることをやりつくしたいと思いました。