ブログ

通信販売に新たな規制_改正特定商取引法等6月施行

 最近、「初回無料」や「お試し」で誘引する定期購入商法をよく見かけますよね。
本当に「お試し」で済んだり、無料の初回のその後の契約条件や契約内容が明記されていれば問題ないのですが、実際にはそのまま定期購入させられたり、解約させてもらえなかったり、といった詐欺的なものも含まれています。
 消費生活相談センターなどに寄せられる相談件数でも、近年、定期購入に関するものが急増し、その9割以上がインターネット通販だそうです。
 こうした背景から、昨年6月、通信販売等を規制する「特定商取引に関する法律」などが改正公布され、今年6月から施行されます。

今回の主な改正点は、次の3つです。

〇通信販売に関する規定の新設
〇電磁的記録によるクーリングオフの導入
〇販売預託の原則禁止等(預託法の改正)

〇通信販売に関する規定の新設

 規制の背景は「定期購入」ですが、適用範囲は「定期購入」に限らず「通信販売」全般が対象です。
改正点は、次のとおりです。

・特定申込みを受ける際の表示義務(特商法第12条の6)
 申込書面(申込ハガキ、申込用紙)やネット通販の最終確認画面に次の6項目を表示しなければなりません。
    ①分量 ②販売価格・対価 ③支払時期及び支払方法 ④引渡時期・移転時期・提供時期
    ⑤申込みの期間がある場合、その旨・その内容 ⑥申込みの撤回・解除に関する事項
 そして、次のような表示が禁止されました。
    ・書面の送付やネットでの情報送信が「契約申込」となることを誤認させるような表示
    ・上記①から⑥の事項について誤認させるような表示

・不実の告知の禁止(第13条の2)
 申込みの撤回や解除を妨げるため、「定期購入なので残りの代金を払わなければならない」「使用を中止すると逆効果になる」など、不実のことを告げる行為が禁止されました。これは、電話や個別メール送信による告知でも適用されます。

・取消権(特商法第15条の4)
 上記第12条の6の表示義務や禁止表示に違反した表示により、消費者が誤認して申込をしてしまった場合の取消権を明記しました。

 第16条の2や第13条の2の違反には、行政処分(第14条、第15条)や罰則(第70条、第72条、第74条)があり、適格消費者団体による差止請求の対象(第58条の19)にもなります。

〇電磁的記録によるクーリングオフの導入

 電子メールやクーリングオフ専用サイトなど電磁的記録によってもクーリングオフができるようになりました。もちろん、今までどおり書面でもできます。効力発生時はいずれも発信時です。(第9条)
 事業者は契約書面等に、電磁的記録でもクーリングオフができる旨 を記載する必要があります。(第4条)

〇販売預託の原則禁止等(預託法の改正)

 販売預託商法とは、古くは豊田商事事件、記憶にあるところでは安愚楽牧場事件、ジャパンライフ事件、などです。ざっくり言えば、いわゆる果実的な利益をエサに、元本である物を売ったことにして、代金を集め、実際には利益など払われず、元本の物も架空だったりする悪徳商法です。
 今回、預託等取引に関する法律も改正され、預託販売の原則禁止(預託法第9条、第14条)、対象物の限定列挙を撤廃してすべての物品を対象にしました(第2条)。

 消費者法の分野では、消費者契約法とともに特定商取引法は重要かつ基本的な法律です。
 新しい規制ができると、事業者さんには「また厳しく面倒になる」と見えるかもしれませんが、要は、お客さん(消費者)を騙さない、誤認させない、判りやすく、ということにつきます。真面目に、まっとうなご商売をされていれば、何も恐くありません。むしろ、悪質な業者が退場させられ、真面目な事業者さんがまっとうにやっていける、きちんとしたルールが出来た、とポジティブにとらえていただけると、法律実務家としてはうれしいです。

以上の改正内容について消費者庁が専用サイトを設けていますので、ご紹介しますね。
令和3年特定商取引法・預託法の改正について | 消費者庁 (caa.go.jp)

ネット通販の最終確認画面などの表示義務については、以下に掲載があります。
通販事業者の皆さんへ 最終確認画面や申込書面の表示方法の参考となる資料を掲載しています。 | 消費者庁 (caa.go.jp)

消費者庁では、説明会動画とその資料も公開しています。
(動画)消費者庁主催 令和3年特定商取引法・預託法等改正に係る令和4年6月1日施行に向けた事業者説明会 | 消費者庁 (caa.go.jp)
220318 事業者向け説明会資料 (caa.go.jp)