気候変動影響評価報告書
今年(2026年)2月16日、第3次気候変動影響評価報告書が、環境省から公表されました。
気候変動影響評価報告書とは、気候変動適応法(平成30(2018)年)第10条で、環境大臣がおよそ5年ごとに、最新の科学的知見を踏まえて、気候変動やその影響が、国民の健康や生活、各種産業に与える様々な影響の総合的な評価について報告書を作成して公表しなければならない、と規定されていることにもとづくものです。
今回の第3次報告書では、7つの対象分野(農林水産業、水環境・水資源、自然生態系、自然災害・沿岸域、健康、産業・経済活動、国民生活・都市生活)について、これを細分化した計80項目ごとに、重大性(気候変動影響の程度や可能性)、緊急性(影響の発現時期や追加的適応策の意思決定が必要な時期)、確信度(情報の確からしさ))、の3つの観点で評価しています。私なりの理解でいうと、重大性は損害の大きさ、緊急性は対策や対応の切迫度、確信度は現実化可能性、といったところです。
重大性については、3つの場合が設定されています。現状として「約1℃上昇」、パリ協定目標の「1.5~2℃上昇時」、そして、何も対策しないシナリオの「3~4℃上昇時」です。ただ、ご存じのように、国連の世界気象機関(WMO)は、すでに2024年と2025年の世界平均気温が1.5度前後に達したと発表していますから、「現状」はすでに「1.5~2℃上昇時」でもあると見るほうがよさそうです。
そして、重大性の程度について、3つのレベル(レベル1:影響が認められる、レベル2:重大な影響が認められる、レベル3:特に重大な影響が認められる)で評価しています。
今回の評価結果では、この間に科学的知見が充実したことで確信度が向上したが、そのためむしろ気候変動の影響は将来のことではなく既に顕在化していることが判明し、多くの項目で影響の発現時期に比べて適応策が十分な効果を発揮するまでに要する時間が長いことから、できるだけ早い意思決定が求められる、ことが示されました。
気候変動影響評価結果(一覧)pic-topic-86-table@2x.png (2340×1540)
具体的には、以下のような影響が指摘されています。
・農林水産業の分野では、
米の収量や一等米比率の低下、高温による果樹の着色不良や収穫時期等の変化、家畜(特に乳牛)の生産性低下、大雨等による農地や施設への被害やため池の渇水、林業では病害虫や山地災害、漁業では高水温による養殖被害や沿岸魚介類の変化、アユの生態の変化
・水環境・水資源の分野では、
大雨による濁度上昇、河川水温の上昇、降雪変化による春季の河川流量現象、地下水渇水による地盤沈下や塩水化
・自然生態系の分野では、
高山・亜高山帯での動植物の変化、冷水魚の生息域現象、洪水増加による河川遡上魚類への影響、海水温上昇による亜熱帯性サンゴの白化頻発、温帯藻場縮小とサンゴ群集へ置換、生物の高緯度高標高への移動、局所的大量絶滅
・自然災害・沿岸域の分野では、
豪雨や洪水の激甚化と被害額増加、内水氾濫の頻発と浸水長期化、土砂災害の頻発や激化、台風並みの強風や発達低気圧の発生
・健康の分野では、
暑熱による死亡や熱中症のリスクが特に高齢者や寒冷地域・大都市圏で増加、各種疾病の発生や悪化、高齢者や小児や妊婦や糖尿病患者でリスク増加、マダニ媒介の重症熱性血小板減少症候群の拡がり、メンタルヘルスへの影響、自然災害関連の疾病や感染症の増加
・産業分野では、
全般的に、自然災害による直接被害やインフラ・サプライチェーン寸断による間接被害、労働者の熱中症被害の増加
・健康な生活とその基盤の分野では、
自然災害によるライフラインや交通インフラの寸断や損害、自然災害による住居被害、住居内でも熱中症リスク、都市部での熱ストレス増大によるQOL低下やメンタルヘルスへの影響、災害避難の頻発
概要版 000380482.pdf
気候変動影響評価報告書の総説 000377713.pdfでは、産業種別、生活場面、ごとに具体的な影響評価がまとめられています。自社やご自身のBCP策定にも役立てることができます。目次のページ数をクリックすると該当ページに飛ぶことができます。
いくつか抜粋して見てみましょう。
【林業(人工林)】
土壌が強く乾燥するとスギの成長が低下する可能性、ナラ枯れ病原菌の媒介昆虫が津軽海峡を渡った可能性、スギの気候適応に関わる遺伝変異の解析、が指摘されています。
【産業(全般)】
将来予測される影響として、全国の工業団地の約3割が浸水リスクを抱えているとされ、代表的な港湾のうち広島湾と三河湾の被害額が特に大きいことが予測されているそうです。
【製造業】
製造業において、2020年~2024年の5年間に発生した熱中症による年間死傷者数は897名で、建設業に次いで多く発生。
平均気温の変化による影響としては、温度制御のためのコスト増大、労働環境の悪化と生産性の低下、夏季期間の労働自粛による売り上げ減少などが想定される、としています。
そして、こんなサイトも見つけました。これも参考になりますよ↓
インフォグラフィック(事業者編) | 事業者の方へ | 気候変動適応情報プラットフォーム(A-PLAT)
世界中で戦争が勃発して、「今は脱炭素どころじゃないんだよ」という中小企業経営者の方も多いと思います。
ただ、トランプ氏の気まぐれに比べ、すでに人類が排出してきた温暖化ガスによる気候変動は、確実に進行しているようです。
中小企業のBCP(事業継続計画)策定率が低いことが懸念されています。
課題山積で大変ですが、信頼できる情報や資料を集めて、確実にやってくるリスクに備えましょう。

