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民法改正 共同親権など、国会審議中です。

 マスコミ報道もされているので、ご存知の方も多いと思います。

 先ずは、現行の民法が「親権」についてどういう定めをしているか見てみましょう。

民法 第四章 親権 第一節 総則
第818条(親権者)
1 
成年に達しない子は、父母の親権に服する。
 子が養子であるときは、養親の親権に服する。
 親権は、父母の婚姻中は、父母が共同して行う。ただし、父母の一方が親権を行うことができないときは、他の一方が行う。
第819条(離婚又は認知の場合の親権者)
 父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その一方を親権者と定めなければならない。
 裁判上の離婚の場合には、裁判所は、父母の一方を親権者と定める。
 子の出生前に父母が離婚した場合には、親権は、母が行う。ただし、子の出生後に、父母の協議で、父を親権者と定めることができる。
 父が認知した子に対する親権は、父母の協議で父を親権者と定めたときに限り、父が行う。
 第一項、第三項又は前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、父又は母の請求によって、協議に代わる審判をすることができる。
 子の利益のため必要があると認めるときは、家庭裁判所は、子の親族の請求によって、親権者を他の一方に変更することができる。

 第二節では、親権の効力として、監護及び教育の権利義務、居所の指定、職業の許可、財産の管理及び代表、などを定めています。

 実は、離婚後の単独親権は、世界的には少数派なのだそうです。
 法務省の法制審議会家族法制部会は、今年1月30日、離婚後の共同親権の導入を主な内容とする「家族法制の見直しに関する要綱案」を取りまとめ、2月15日、法務大臣に答申しました。
 現在、国会審議中ですが、その要綱案から、焦点の離婚後の親権の部分を見てみましょう。

○ 父母の離婚後等の親権者の定め
 民法第819条を見直して、次のような規律を設けるものとしています。
ア  父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その双方又は一方を親権者と定める。
イ  裁判上の離婚の場合には、裁判所は、父母の双方又は一方を親権者と定める。
ウ エ(略)
オ  上記ア(略)の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、父又は母の請求によって、協議に代わる審判をする。
カ  子の利益のため必要があると認めるときは、家庭裁判所は、子又はその親族の請求によって、親権者を変更することができる。
キ  裁判所は、上記イ、オ又はカの裁判において、父母の双方を親権者と定めるかその一方を親権者と定めるかを判断するに当たっては、子の利益のため、父母と子との関係、父と母との関係その他一切の事情を考慮しなければならない。この場合において、次の①又は②のいずれかに該当するときその他の父母の双方を親権者と定めることにより子の利益を害すると認められるときは、父母の一方を親権者と定めなければならない。
① 父又は母が子の心身に害悪を及ぼすおそれがあると認められるとき。
② 父母の一方が他の一方から身体に対する暴力その他の心身に有害な影響を及ぼす言動(下記クにおいて「暴力等」という。)を受けるおそれの有無、上記ア(略)の協議が調わない理由その他の事情を考慮して、父母が共同して親権を行うことが困難であると認められるとき。
ク  上記カの場合において、家庭裁判所は、父母の協議により定められた親権者を変更することが子の利益のため必要であるか否かを判断するに当たっては、当該協議の経過、その後の事情の変更その他の事情を考慮するものとする。この場合において、当該協議の経過を考慮するに当たっては、父母の一方から他の一方への暴力等の有無、家事事件手続法による調停の有無又は裁判外紛争解決手続(略)の利用の有無、協議の結果についての公正証書の作成の有無その他の事情をも勘案するものとする。

○ 養育費等に関する規律
1 養育費等の請求権の実効性向上(先取特権の付与)
2 法定養育費
3 裁判手続における情報開示義務

○ 親子交流に関する規律
1 父母の婚姻中の親子交流
2 裁判手続における親子交流の試行的実施

○ その他
1 夫婦間の契約の取消権(民法第754条)を削除
2 裁判上の離婚事由のうち、配偶者が強度の精神病にかかり回復の見込みがないことを裁判上の離婚原因と定める民法第770条第1項第4号を削除

  離婚後の共同親権について、マスコミ報道で見る限り、賛成・推進する側には男性が、反対・阻止しようとする側には女性が、登場するのは興味深いなぁと思います。
 現状の家庭裁判所実務は、およそ10歳以下の子供の場合に、親権者はほぼ間違いなく母親と指定されます。男性の賛成・推進は、これに対する異議申し立てかもしれません。
 他方、要綱案にも、最も懸念されているのがDV(ドメスティックバイオレンス、家庭内暴力)であることが伺えます。女性の反対・阻止は、ほぼDVに対する懸念です。それほどに日本の社会でも家庭内暴力が蔓延しているかと思うと、悲しくなりますね。

 私の経験で言うと、父親の「親権」要求には、今の60代くらいで世代間ギャップがあるように感じていました。ざっくり言うと、今70代より上の世代の日本人男性は、妻が子供は欲しいというなら黙って渡してやるのが男の度量、みたいな印象を受けましたが、今60代より若い世代の男性は、実家の母親も巻き込んで子供の親権獲得に執着する感じがありました。もちろん、例外もありましたし、本当に子供好きのお父さんなんだなぁと思う方もおられました。ただ、なかには、親権の獲得を離婚の勝敗のシンボルと誤解してるのではと思われるような方もおられました。母親の面会交流拒否、と、父親の養育費支払い拒否、が互いの武器となって駆け引き材料とされるのも、悲しいですね。本来は、子の福祉こそ中心に据えられるべき、が理念なのです。

 理想論かもしれませんが、離婚しても子供にとっては父親と母親であることに変わりは無いので、共同親権が本来だと思います。でも、共同親権ってホントに、親がオトナでないと実現できませんよね。
 葛藤を抱えながら、一歩を踏み出すしかない、審議会の結論はそういうことなのだと思います。