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民法改正(共有 遺産分割 相隣関係) 所有者不明土地問題

 前回に引き続き、所有者不明土地問題です。
 今回は、民法の、共有(249条~)、遺産分割(898条~)、新制度(改正264条の2~)、相隣関係(209条~)です。
 改正の理由ですが、先ずは、所有者不明土地の定義をおさらいしましょう。
「所有者不明土地」とは・・?
①不動産登記簿により所有者が直ちに判明しない土地
②所有者が判明しても、その所在が不明で連絡が付かない土地
です。
 こうなってしまうのは、土地が「共有」になっている場合がほとんどです。そして、「共有」が発生する原因の多くは、相続による「遺産共有」です。
 なので、遺産共有(遺産分割未了の間の共有関係)の解消や合理化、さらに、共有関係そのものの見直しと合理化、これらでも解決しえない場合のために、財産管理制度の見直しと新制度創設、解決までの間も隣接地の被害を軽減するための相隣関係の見直し、がなされました。これらが、今回の改正になりました。
 では、少し眠くなるかもしれませんが、ひとつひとつ見ていきますね。

有の見直し
 これは、共有物の利用促進、と、共有関係の解消促進、の2面からの改正です。


*共有物の利用促進
 現行民法は、各共有者はその持ち分に応じて共有物全部を使用できる(現行民法249条)としながらも、共有物の「変更」(例えば、共有物全部の処分、共有山林の伐採、借地借家法適用の賃借権設定、農地を宅地に変更、など)には「全員の同意」(現行民法251条)、共有物の「管理」(例えば、貸借契約の解除、使用する共有者を決定)には「持分価格の過半数」(現行民法252条)が必要で、単独でできるのは「保存行為」(現行民法252条但書き)に限られています。
 これでは利用関係が曖昧で、「変更」の範囲も広いので、次の改正がされました。
変更が軽微なものの緩和(改正民法251条1項、252条1項)
 「形状又は効用の著しい変更を伴わない」軽微な変更なら、持分価格の過半数でできることになりました。
短期賃借権等の設定の緩和(改正民法252条4項)
 短期賃貸借(現行民法602条、10年を超えない山林の賃借権等(樹木の栽植又は伐採を目的)など)の設定は、持分価格の過半数で決定できることが明記されました。
共有物を使用する共有者がいる場合のルールの明確化(改正民法252条1項後段、3項、249条2項3項)
 管理について、その使用共有者に「特別の影響」を及ぼすときのみ承諾を要することが明記され、また、使用者の善管注意義務や自己の持分を超える使用には対価償還義務があることが明記されました。
管理について、所在不明や賛否不明の共有者がいる場合(改正民法252条2項)
 裁判所の決定を得て、その他の共有者の持分価格の過半数で決められるようになりました。
変更について、所在不明の共有者がいる場合(改正民法251条2項)
 裁判所の決定を得て、その他の共有者全員の同意で決められるようになりました。
共有物の管理者(改正民法252条の2)
 選任・解任(改正民法252条)、権限、などが明記されました。管理者は共有者でなくても良いです。
遺産共有の持分の基準(改正民法898条2項)

 相続開始(=被相続人の死亡)から遺産分割までの「遺産共有」の共有持分は、基本的に法定相続分(民法900~902条)に拠ることが明記されました。

*共有関係の解消促進
裁判による共有物分割(改正民法258条)、遺産共有の場合(258条の2)
 共有物分割の裁判について、現行民法では「現物分割」と「競売」しか明記がなく、判例実務で「賠償分割」が認められていましたが、改正民法では「賠償分割」を明文化したうえ、競売分割を補充的位置づけにしました。但し、遺産共有については、相続開始後10年間は共有物分割裁判ができないこととしました。
所在等不明共有者の持分について、取得(改正民法262条の2)、譲渡(改正民法262条の3)
 所在等不明の共有者がいる場合も、裁判所の決定を得て、その持分を取得したり、譲渡権限を得たり、することができる制度が新設されました。但し、遺産共有の場合は、相続開始後10年経過しないと利用できません。

相続制度(遺産分割)の見直し
 相続は被相続人の死亡と同時に開始しますが、相続人が複数の場合は、遺産分割によって具体的な取得が決まらない限り、遺産である土地・建物、株式、預金などは、基本的に法的相続分での共有(遺産共有)になります。遺産分割には期限が無いので(相続税の申告期限とは違いますよ)、無関心による放置や紛争の長期化で、遺産共有がいつまでも解消されないことが問題となっていました。
 そこで、
遺産分割に事実上の期限(改正民法904条の3)
 相続開始から10年経過後は、特別受益や寄与分(903条~904条の2)の主張ができなくなりました。遺産分割で紛争になりやすいこれらの主張を封じることで、事実上の期限にしようという狙いです。10年経過後は基本的に法定相続分に拠る遺産分割になります。
 施行日未定ですが、施行前の相続にも適用され、5年の猶予期間があります(附則第3条)。
上記期限後は共有物分割訴訟に一本化(改正民法258条の2第2項3項)
 一つの物に遺産共有と通常の共有が併存する場合、現行ではそれぞれ遺産分割(家庭裁判所)、分割訴訟(地方裁判所)と別々の手続きが必要ですが、相続開始から10年経過後は、遺産共有も含めて分割訴訟でできるようになりました。

財産管理制度の見直し・創設
 現行の財産管理制度は、人(自然人、法人)単位で、所有者不明土地建物の管理だけには使いにくいものでした。
そこで、所有者不明の「土地」や「建物」に着目して、新しい制度が創設されました。

所有者不明土地・建物管理制度(改正民法264条の2~8)
 利害関係人(国の行政機関や地方公共団体の長も(改正所有者不明土地特措法38条2項))の申立により、裁判所が「所有者不明土地(建物)管理人」を選任して管理命令を発し、土地あるいは建物を含む対象財産の管理処分権は管理人に専属することとなり、管理人は保存・利用・改良行為のほか、裁判所の許可を得て処分もできます。なお、この建物管理制度は、区分所有建物(マンション)には適用されません(改正区分所有法6条4項)。
管理不全土地建物管理制度(改正民法264条の9~14)
 利害関係人の申立により、管理不全により他人の権利利益の侵害又はそのおそれが認められれば、裁判所が「管理不全土地(建物)管理人」を選任して管理命令を発します。対象財産の管理処分権は管理人に専属せず、管理人は保存・利用・改良行為はできますが、裁判所の許可を得て処分する場合も、土地(建物)の処分には所有者の同意が必要です。なお、この建物管理制度も、区分所有建物(マンション)には適用されません(改正区分所有法6条4項)。
相続人不在の場合の管理につき、相続財産管理人を「相続財産清算人」に名称変更して、手続きも合理化・短縮(改正民法952条2項~)
 現行の相続財産管理人の選任の公告と相続人捜索の公告を統合することで、現行では計10カ月以上要していたものを6カ月以上に短縮されました。
家庭裁判所による相続財産の保全介入を包括的な制度に(改正民法897条の2)
相続放棄した者の管理義務の要件や内容を明記(改正民法940条1項)
不在者財産管理に供託を新設(改正家事事件手続法146条の2)

相隣関係の見直し
 「相隣関係」って、聞きなれないと思います。
 隣接地同士の日常的なもろもろに関する重要な規定群です。意外にも、民法の所有権の規定の章の中に在ります。

 所有者不明土地や管理不全土地で、日常的に迷惑を受けるのはお隣さんですよね。その迷惑を少しでも軽減できるよう、相隣関係のいくつかが見直し、新設されました。

隣地使用の目的、要件、範囲が詳しく明記されました(改正民法209条)
 使用できる場合に、現行の「境界又はその付近における障壁、建物その他の工作物の築造、収去又は修繕」に加え、「境界標の調査又は境界に関する測量」「隣地の竹木の越境した枝の切取り」が明記され、原則事前通知が必要で、使用形態は隣地使用者に最も損害が少なくなるよう、損害が生じた場合には償金請求、が規定されました。
ライフライン設備の設置・使用権(改正民法213条の2~3)
 相隣関係の規定は、隣地同士の土地所有権の利用調整規定でありながら、ほとんど改正されないままだったため、かなり古臭くなっていました。そこで、「電気、ガス又は水道水の供給その他これらに類する継続的給付」(電話・インターネットの電気通信も含まれます)の引き込みや受給のため、他人土地への設備設置権、あるいは、他人所有設備の使用権、が明記されました。事前通知、損害最小、損害に対する償金、も明記されました。
越境した竹木の枝の切取り(改正民法233条3項、2項)
 現行では、越境してきた竹木の、根は自分で切り取ることができるのに、枝は隣地所有者に切ってもらわなければなりませんでした。不合理な感も否めないので、一定の要件があれば枝も自分で切れることとし、竹木が共有でも各共有者が切れることとしました。


 最後まで読んでくださった方、本当にありがとうございます。
 私自身もとっても勉強になりました(*^^)v。
 では、また、これからもよろしくお付き合いくださいね(*^-^*)