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改正育児・介護休業法が4月から施行、男女ともに仕事と育児・介護を両立できる社会へ

 昨年改正された育児・介護休業法が、今年4月から施行されます。
 4月施行の改正概要をご紹介するとともに、一連の改正が目指している社会像をイメージしてみましょう。

 今回の改正の趣旨は、男女ともに仕事と介護を両立できるように、です。
 育児に関しては、子どもの年齢に応じた柔軟な働き方の実現、男性の育児参加と女性のキャリア形成支援、であり、介護に関しては、介護離職防止のため、個別事情に応じて柔軟な対応をするための両立支援を強化すること、にあります。

 では、4月施行分を具体的に見ていきましょう。すでにご存じの方も多いと思いますので、ご紹介は簡単にしますね。詳しくは、厚労省リーフで見てください。

子の看護休暇(等)の見直し
・従前の小学校就学前まで、から、小学校3年生終了まで、に拡大されました。
・病気やけがに加え、感染症による学級閉鎖等、と、入園卒園入学式が追加されました。

残業免除の対象拡大
・3歳未満、から、小学校就学前の子を養育する労働者、に拡大されました。

短時間勤務制度(3歳未満)の代替措置にテレワーク追加

育児(3歳未満の子)のためのテレワーク導入(努力義務)

男性育児休業等取得率の公表義務の適用拡大(従業員1000人⇒300人)

介護休暇取得可能労働者の要件緩和
・従前は労使協定で継続雇用6か月未満労働者の除外が可能だったものを撤廃

介護離職防止のための雇用環境整備
・介護休業等支援制度の申出ができるよう、研修、相談窓口、事例収集・提供、利用促進方針の周知、のいずれかの措置を講ずる義務

介護離職防止のための個別の周知・意向確認等
・介護に直面した旨の申出をした労働者に対する個別の周知・意向確認
・介護に直面する前の早い段階(40歳等)での情報提供

介護のためのテレワーク導入(努力義務)

   ⇒ 厚労省リーフレット001259367.pdf

 今の若い世代が求めている家族像は、夫婦共働き、ともに残業のないフルタイム、子どもは二人、なのだそうです。昭和生まれの私でも、それいいよねって思います。昭和モデル(モーレツサラリーマンと専業主婦)はもう、過去の遺物にしなければなりません。

 この間、女性の社会進出は進みましたが、総務省の社会生活基本調査によると、令和3年においても、6歳未満の子がいる世帯で、夫も妻も雇用されている場合の1日当たりの家事関連時間を比較すると、妻は6時間32分であるのに対して、夫は1時間57分であり、3.4倍の差があるのだそうです。5.5倍という調査もあります。
 育児休業制度は充実してきましたが、利用者はほとんどが女性で、これがかえって女性就業者のキャリア形成を阻害している状況も出てきています。
 厚労省の21世紀成年者縦断調査によると、夫の家事・育児時間が⾧いほど、妻の継続就業割合が高く、また第2子以降の出生割合も高い傾向にあるそうです。
 つまり、若い世代が望むように、家事育児は夫婦で協働できるよう、夫の家事育児参加をもっと進めること、これこそが少子化、人手不足、への抜本的対策になります。
 厚労省イクメンプロジェクトによる若年層における育児休業等取得に対する意識調査によれば、若い男性の就職先選びにおいて、先輩男性社員の育休取得状況が、「影響がある」48%、「やや影響がある」28%、合わせて76%が選択要素と回答しています。

 介護は、育児と違って、いつどのように事情が発生するか、当該本人でさえ予測しえないところが難しいところです。
 今回の改正は、要するに、一般に介護が現実化する手前の40歳くらいの時点で、会社が各従業員の介護リスクを把握して本人にも各種支援制度とともに認識させ、実際に介護に直面した場合には、その個別事情に応じて全社で支える体制づくりをしておきましょう、ということです。

 今回の改正で育児にも介護にも共通するところは、個別事情(本人の意思も含めた)に応じた柔軟な働き方ができる職場づくり、というところです。
 個別事情に応じて柔軟な対応といえば、むしろ中小企業のほうが得意ですよね。
 就業規則などを改正法に合わせて見直すことは必要ですが、運用と定着を考えた場合、改正法に合わせた細かい制度化にエネルギーを費やすよりも、経営者ご自身や幹部社員さんの頭を昭和モデルから決別させることのほうが、効果が期待できるかもしれません。